【異次元への鍵】この毒キノコを食べると、謎の「小人」が見えるのはなぜだ?

生命体の不思議

はじめに

初代スーパーマリオのこのシーン、皆さんもご存じですよね。本当かどうか分かりませんが、この、キノコを食べたら大きくなり、敵に触れたら小さくなるという設定は、イグチというキノコから発想を得たという噂があります。

イグチというキノコは、旨味成分が多く含まれており、香りが強く、肉質も柔らかいので、海外では珍味として有名です。特にフィンランド、スカンジナビア、中国の南西部などでは、非常に人気のある食材です。

しかし、イグチは毒性を持っています。十分に加熱せずに食べてしまうと、めまい、嘔吐、下痢などの食中毒の症状に加え、幻覚も見えてきます。イグチの収穫量が多い地域では、毎年収穫時期の夏になると、緊急搬送の件数が一気に跳ね上がります。

小人が見えるというイグチ中毒患者

妙なことに、病院に運ばれるほとんどのイグチ中毒の患者が見る幻覚は、ほぼ似たような内容です。患者たちによると、体調不良を感じてから間もなく、どこからともなく数多くの小人が現れ、机の上で走ったり、床の上で踊ったりするということです。小人たちの身長は20~30cm程度で、人間と同じ外見をしています。8割の患者が見えた小人の数は、なんと百人を超えているそうです。小人が現れている間は、はっきりとした意識を持っていたのがほとんどで、超リアルなVR映画を見ているような気分で、なかなか印象に残る経験と言う人がほとんどだそうです。

しかし、なぜこれが妙なのかというと、何らかの化学成分が体内に入ることで引き起こされる幻覚というのは、人によってその幻覚の内容がそれぞれ異なるのが一般的です。しかし、イグチ中毒者のほぼ全員が謎の小人が見えるという幻覚は、とても説明がつきにくい現象です。一説によると、これらの小人は実は別の次元で生活している生物で、イグチ中毒によって、その世界の様子が見えるようになったということです。もちろんオカルト的な解釈以外に、科学者たちもこの現象について研究を進めています。

今日は、この謎の幻覚について、現状の研究成果を含む情報を紹介しながら、謎の小人が現れる原因について分析していきたいと思います。

「毒」キノコ

まずキノコ自身ですが、ちょっと変わっている存在です。植物のように見えるかもしれませんが、水と炭酸ガスを原料に、太陽光を使って自身の体を形成していく能力を持っていません。一方、動物のような、動植物を食べて消化して自身の体を形成していく能力も持っていません。

キノコは、植物や動物の死骸に寄生して、それらを自身の体から分泌した消化液で分解し、その分解したものを栄養として吸収することで生きています。ですので、キノコは植物界にも動物界にも属していない「菌界」に属しています。

イグチ中毒のメカニズム

キノコのほとんどは毒を持っており、人間がそれを処理せずに食べると中毒を引き起こします。イグチも毒を持っているキノコですが、十分な加熱により毒成分が分解されるので、ほとんどの地域においては合法な食材です。しかし、調理不十分もしくは生で食べた場合は、先ほど紹介したように、食中毒を引き起こし幻覚症状が現れます。

体内で加水分解されシロシンとなる

この幻覚は、イグチに含まれているシロシビンという化学成分によって引き起こされます。シロシビンが体内に入ると、加水分解によってシロシンになります。シロシンは、人間の脳内にある神経伝達物質の一つであるセロトニンと構造が似ています。それで本来セロトニンしか受け入れないセロトニン受容体は、間違ってシロシンとも結合してしまいます。

セロトニン受容体がシロシンとミスマッチを起こす

この間違った結合が起こると、頻脈、瞳孔散大、体温上昇、頭痛などの症状が起こります。体内に大量のシロシンが入り、多くのセロトニン受容体がシロシンとミスマッチした場合、神経雪崩という現象が起きます。この時、連鎖的な影響が神経回路の中で起こり、脳がカオスの状態になり、幻覚、幻聴、共感覚などの症状が引き起こされます。

イギリスのICL大学の研究チームが、被験者の体内にシロシビンを入れて、fMRIで彼らの脳の活動状況を調べました。このマップが示しているのは、何もされていない被験者の正常な神経回路です。これに対して、2mLのシロシビンが体内に入れられた被験者の神経回路がこちらです。

御覧の通り、シロシンの働きによって、元々存在していない神経伝達経路が出現し、本来ではあり得ない神経細胞どうしのつながりが強制的に起こりました。

これがどんな影響を与えるかというと、もし嗅覚を担当する部分と視覚を担当する部分が繋がると、何か匂いを嗅いだ時に、ある色が目の間に現れます。これと似たように、聴覚と触覚が繋がると、音を聞こえた時に、体のどこかが触れているように感じます。

これがイグチに含まれているシロシビンが幻覚を起こすメカニズムですが、この研究でシロシビンを体内に入れられた被験者たちの中で、小人が見えたという人はいませんでした。

一般的な幻覚が起きる理由は分かりましたが、イグチ中毒者が見る小人の幻覚の理由はまだ謎のままです。先ほども紹介したよくある一つの解釈は、これらの小人は、私たちがいるこの現実世界とは別の世界もしくは別の次元にいるリアルな存在で、人間がイグチを食べたことで起きる何らかのメカニズムでその世界のことが見えるようになったということです。一見オカルト的な解釈ですが、僕は一理あると考えています。

本当の世界

機能的に弱いと言われている人間の五感

まずそもそも、私たちが感じている「現実世界」は、客観的な世界ではありません。なぜなら、私たちが周りの環境を感じ取る手段は、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感です。しかし、人間の五感は探知機として、非常に機能的に弱いと言われています。

私たちが最も頼りにしている聴覚と視覚、触覚ですが、まず聴覚は空気などの媒体に依存しています。耳の中の鼓膜により空気の振動を感じ取ることで音が聞こえるようになりますが、逆に言うと、人間の聴覚はこの広い宇宙の空気などの媒体が存在しない場所では、情報を感じ取れなくなります。その機能を発揮できる地球においても、人間の耳が聞き取れる範囲は、20Hzから20,000Hzの間だけです。この範囲はイルカの1/7以下で、人間が聞こえない音はたくさん存在しています。

次に人間が最も頼りにしている視覚ですが、見えている理由は、目が電磁波を感知できるからです。目が感じ取れる電磁波は可視光線と言い、その波長の範囲は0.36μmから0.83μmです。これがどれくらいの範囲かと言うと、ガンマ線の波長は10のマイナス11乗メートルで最も短く、最も長い波長は10万キロメートルもあります。ですので、人間が見えている0.36μmから0.83μmという範囲は、針の穴から世界を見ているような感じです。人間より広い範囲の電磁波が見える動物はいますが、彼らが見えている世界と我々が見えている世界はだいぶ違うはずです。

真実の目
真実の目

よく「この目で見たから間違いない」というセリフがありますが、実際のところ、人間の目で見た世界は、全貌のほんの一部にしかすぎません。

最後に触覚ですが、私たちが物に触れられたり、手に持てたりできるのは、全て電磁相互作用の働きによる結果です。私たちの体と他の物質の間に電磁相互作用が働いているから、物に触れた時に触覚が起こります。しかし、宇宙には私たちと電磁相互作用が起きない物質も存在しています。しかもそれらの物質のほうが、圧倒的に多いことが分かっています。それが、ダークマターとダークエネルギーです。

視覚の話に戻りますが、仮に全波長の電磁波を感知できる装置があって、それを通して世界を観察したとしても、この宇宙の5%以下の質量を占める物質しか見ることができません。残りの95%の質量は、ダークマターとダークエネルギーという正体不明の謎の物質です。

「宇宙の謎」の動画や投稿でも言いましたが、これらの物質は、光を発しない、反射しない、吸収しない上、電磁相互作用も持っていません。つまり、私たちの五感は完全にこれらの物質を感知することができません。見えないのはともかく、これらの物質が我々の体と触れた時でも、私たちは何も感じられません。ですので、この投稿を見ている最中に、重さ数トンのダークマターがあなたの体を貫通しているかもしれません。

もっと怖いのは、物質の量だけから見れば、この宇宙の大部分を占めているのは私たちが感知できないその95%の物質です。私たちはこれらの物質をダークマターと呼んでいますが、本当は5%の物質でできた我々の世界のほうが、「ダーク」と呼ぶべきだと僕は思います。さらに、その世界のほうが物質の量が多いので、ダークマターでできた生命体の存在も十分に考えられます。

最後に

つまり、私たちが感じ取っている現実世界は、本当の全貌ではなく、五感が感知できるほんの一部の範囲です。仮に五感を持っていない人がいたら、私たちにとって実在している光、音、匂い、雨、雪、風などの物は、彼にとっては存在していないことになります。逆に言うと、多くの未知の物は実はこの世界に存在していて、ただ私たちが感知できていないだけです。

小人の幻覚の話に戻りますが、これらの小人は私たちが普段見えていないが実在しているのかというと、その可能性はゼロではないと僕は思います。神経回路の活性化によって、普段感じ取れない情報を感知できるようになり、普段見えないモノが見えるようになったのかもしれません。

最後になりますが、海外旅行などでイグチを食べる機会があれば、必ずちゃんとしたレストランで、ちゃんと火が通ってるかを確認してから食べてくださいね。

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