時間は存在しない、時間は幻影にすぎない

世界の真相
今回のポイント
  • なぜ「時間は存在しない」という主張が生まれたのか?
  • 時間とは一体何なのか?

はじめに

突然ですが、次の質問にお答えください。

「時間とは何ですか?」

人によって答えはさまざまだと思いますが、あの天才物理学者のアインシュタインの答えを見てみましょう。アインシュタインの親友のMichele Bessoが亡くなった後、彼はBessoの息子への手紙で次のようなことを書きました。

「彼は私より先にこの奇妙な世界を去っていった。これは大したことではない。なぜなら、物理学を信じる我々にとっては、過去・現在・未来というのは幻影にすぎない」

この手紙に書いてある通り、アインシュタインは時間が存在しないという主張を持っていました。私たちは生活の隅々にまで「時間」という概念を使っていて、常に時間の流れを感じているのに、なぜ「時間は存在しない」という主張が生まれたのか?時間とは一体何なのか?今回は、「時間」についてお話していきたいと思います。ぜひ最後までお付き合いくださいね。

時間は絶対的な存在ではない

時間というものは、絶対的な存在であり、時間はどんなものにも依存しておらず、どんなものでも時間の流れを止められない。これは私たちが一般的に思っている時間という存在の性質です。

真実の目
真実の目

この考え方は、「物理学の父」と呼ばれているアイザック・ニュートンによって最初に提唱されました。彼が思うには、時間はこの世界のどんなもの、どんな出来事にも影響されない、絶対的な存在だということです。この考え方は、まさに日々私たちが体感している時間の性質と一致していることから、ほとんどの人は当たり前のようにこの考え方は正しいと思っていますよね。

しかし、ニュートンと異なる考えを持つ人は、大昔の時代から存在していました。今より2300年前の時代に生きていた古代ギリシャ哲学者のアリストテレスは、「時間の本質は何か?」を考えていました。最終的には彼は次のような答えを出しました。「時間は変化を測るための指標である」ということです。

「時間は変化を測るための指標」と答えたアリストテレス

どういうことかと言うと、例えば、家族が「二日間出かけてくる」と言った時に、その「二日間」をどうやって測るのかと言うと、太陽の登り沈みを2回数えれば良いです。この理屈に対してさらに深いところまで考えると、もしこの世界から「変化」がなくなったら、時間もなくなるのか?この質問に対して、アリストテレスの答えはYESです。なぜなら、「時間は変化を測るための指標」だと彼が思っているからです。

つまり、時間の存在は“変化”というものに依存しています。これは、ニュートンの「時間が何にも依存しておらず、時間は絶対的な存在だ」という考え方と真逆となります。どちらが正しいかと言うと、現在の科学界では、アリストテレスの考えが正しいと考えられています。

時間は一体どのような存在なのか?

「哲学的」な視点から

なぜ科学界がそう思っているのかを説明する前に、「因果関係」という別の視点から、時間は一体どのような存在なのかを見てみましょう。

私たちが今この世界に存在できていることの裏には、実は大量の因果関係が潜んでいます。私たちの親が結婚していなければ、私たちは生まれていませんし、地球という星が誕生していなければ、そもそも生命が存在していません。無数の因果関係の成り立ちで、私たちは今この地球で生きています。

因果関係というリレーによって時間をの流れを体感

では、これは時間とどういう関係があるのか?実は、因果関係を整理することで、物事の起きた時系列が分かります。逆に言うと、時間という存在は、因果関係に依存しています。時間を因果関係でできたドミノの列だとすると、ドミノ一つ一つは、それぞれの因果関係として表すことができます。最初に起きた出来事によって、その次の出来事が1つずつ起きていきます。因果関係というリレーによって、出来事が1つずつ起きていき、私たちがそれらの出来事を体感することによって、時間の流れを感じています。

つまり、時間は絶対的な存在ではなく、因果関係にも依存していることが分かります。しかし、これまでお話しした内容はあくまで哲学的な視点から得られた結論です。今から、アインシュタインがどうやって科学的な視点から「時間は絶対的な存在ではない」という結論に辿り着いたのかを見ていきましょう。

「科学的」な視点から

「光速不変の原理」

まず、アインシュタインは「光速不変の原理」を発見しました。どんな運動状態にある人から見ても、光の速度は永遠に毎秒約30万kmのまま、ということです。

例えば、光速の90%の速度、つまり秒速27万kmを出せる宇宙船があるとします。宇宙船と光を同時に空に向けて同じ方向へ発射します。その時に、地上から宇宙船と光を観察している人は、次のような光景を目撃します。宇宙船と光は、最初のうちはほぼ並んで進んでいきます。しかし暫くすると、光は徐々に宇宙船との距離を開き、去っていきます。

一方で、宇宙船の中にいる人は、これとはまったく異なる光景を目にします。宇宙船の中の人から見ると、宇宙船の隣を少しだけ速く進んでいるはずの光は、一瞬で宇宙船を引き離して去ってしまうのです。では、地上にいる人と宇宙船の中にいる人は同じ過程を観測しているのにもかかわらず、なぜ観測された結果が異なっているのか?その理由は、時間の流れる速度が、地上にいる人と、宇宙船の中にいる人の間で違うからです。どう違うのかと言うと、動く速度が速い物ほど、時間の流れる速度が遅くなっていきます。

動く速度が速い物ほど、時間の流れる速度が遅くなっていく

ですので、光速の90%で動いている宇宙船の中にいる人は、地上にいる人より時間の流れる速度が遅くなったのです。従って、その時の宇宙船の中から見れば、光は一瞬で去っていきます。動く速度が速い物ほど、時間の流れる速度が遅くなっていくという不思議な現象は、理論上だけではなく、実験によっても実証済みです。

時間の流れる速度は質量にも影響される

しかしこれはまだ全てではありません。アインシュタインはさらに不思議な事実を発見しています。それは、時間の流れる速度は質量にも影響されるということです。質量の大きい物ほど、時間の流れる速度が遅くなっていきます。その理由は、質量の大きい物は周辺の時空を歪めるからです。

もし人が意識を持ったままブラックホールの中に進入できるとすると、ブラックホールはとんでもない大きな質量を持っているため、ブラックホールの中で過ごす時間がたったの5分でも、地球にいる人たちは数万年も先に進んでいることがありえるのです。映画「インターステラー」でもこの現象について言及しています。既に十分に不思議なこれらの現象ですが、驚くのはまだ早いですよ。さらに不思議なことはこれから始まります。

“現在”(げんざい)は存在しない

“現在”という概念は私たちの生活においては当たり前のように存在しています。しかし、私たちにとって不可欠な“現在”というものは、実は存在していないのです。次の例を見ればその理由が分かります。

光が目に届くまでの時間があるためライブとの間に時差が生じる

大晦日にテレビで放映しているライブ番組を見ています。この時の状態を厳密に言うと、テレビから発した光が目に届くのに、ほんの少しの時間がかかります。その時間が10億分の1秒であれば、あなたが見えているのは“現在”のライブ映像ではなく、10億分の1秒前のライブ映像になります。

光はその星から地球に届くまで、長い時間を要する

しかしこのような短い時間は、私たちの普段の生活においては、完全に無視できるレベルの短さなので、目に見えているのが“現在”のライブ映像だと言っても問題はありません。しかし、そのテレビが10光年離れている惑星にある場合はどうでしょう?大晦日の日に、10光年先の景色が見えるスーパー望遠鏡でテレビの設置された場所を見ますが、見えているのは、見たいと思ったライブ番組ではないのです。なぜなら、光はその星から地球に届くまで、長い時間を要するからです。

従って、望遠鏡で見えているのは、昔の映像になります。では、当時見たかったあのライブ番組が見えると思い、10光年離れている星だから、ピッタリ10年後の時点でまた望遠鏡でそのテレビを見ると、全く違う番組が映っています。そして、テレビ画面に表示している日付を確認すると、何と10年前の大晦日の日付ではない別の日付になっています。

これはどういうことなのか?

真実の目
真実の目

その理由は先ほどもお話したように、時間の流れる速度は、物の動く速度と質量によって異なっているからです。テレビが置いてあるその星の運動速度は地球と異なりますし、星自身の質量も、星周囲の天体がもたらした時空の歪み度合も地球と異なっています。その結果、地球では時間が10年間経ちましたが、その星では7、8年間しか経っていないかもしれないのです。

では、いつ望遠鏡を覗けば見たい番組が見れるのか?もしくは、その星のどの瞬間が、地球の“現在”に相当するのか?実はそれについては、はっきりとした答えがありません。どういうことかと言うと、空間と時間をこのように、1つのブロックだと考えた時に、ブロックを構成する1つ1つのスライスは、とある時点における宇宙全体の空間を表します。1つ前のスライスは、前の瞬間の宇宙全体を表します。1つ先のスライスは、次の瞬間の宇宙全体を表します。

アインシュタインによって提唱された「ブロック宇宙」のイメージ

実は、これがアインシュタインによって提唱された“ブロック宇宙”という考え方です。では、この考え方をもとに、地球にいる男性と10光年離れている星にいる宇宙人は、どのような“現在”にいるのかを見てみましょう。

時間の流れる速度は物体の運動速度と質量によって変わる

従来の考え方では、同じスライスにある宇宙における全てのものは、同じ“現在”の中にいます。この男性と宇宙人もそうです。しかし、時間の流れる速度は物体の運動速度と質量によって変わるので、もし宇宙人が宇宙船で移動し始めると、宇宙人の時間が遅くなります。この時、宇宙人は地球にいる男性と同じスライスにいなくなります。つまり、二人が異なる“現在”を持つことになります。

同じ“泡”の中に存在する=同じ“現在”を持つ

この例で何が言いたいのかというと、宇宙において、それぞれの物はそれぞれの異なる“現在”を持っているということです。それぞれの“現在”は、1つの“泡”のような存在です。同じ泡の中にいる物たちは、1つの同じ“現在”を持ちます。例えば、誤差を1000分の1秒以内にした時に、地球上に存在する全ての物の時間の流れる速度はこの誤差範囲に入るため、地球上の全ての物は同じ“泡”の中に存在することになり、同じ“現在”を持つことになります。しかし誤差を10億分の1秒以内にした場合、この“泡”のサイズは数メートルにまで小さくなります。従って、地表にいるほとんどの人は、それぞれ異なる“現在”を持つことになります。

真実の目
真実の目

これは何を意味するのかと言うと、“現在”というものは、客観的な存在というより、人間の感覚によって作られた1つの概念にすぎないということです

過去も未来も存在しない

時間の流れには方向性があり、時間は未来という方向への一方通行で流れている

これは私たちが思う時間の性質の1つです。この性質によって、「過去」と「未来」という概念があります。人間の感覚は容易に「過去」と「未来」の違いを区別できますが、実は物理学においては、1つの方程式もしくは1つの法則で「過去」と「未来」を区別するのは、ほぼ不可能なことなのです。

古典力学、電磁気学、相対性理論、量子力学、これらの分野の方程式が描写している物理現象は、時間の流れる方向性とは関係がありません。つまり、過去から未来という方向でも、未来から過去という方向でも、これらの物理法則は成り立ちます。ですので物理の観点から、時間には方向性、つまり過去と未来という概念は存在していないと言えます。

物事は無秩序であればあるほど、エントロピーが高くなる

しかし1つだけ、過去から未来という方向のみで成り立ち、逆なら成り立たない物理法則があります。それが「熱力学第二法則」です。この法則のキーポイントは、「エントロピー」という概念です。以前に動画や投稿でもご紹介したことがありますが、エントロピーは、物事の「乱雑さ」や「無秩序な状態の度合い」を表す概念です。秩序のある状態から混沌状態になっていく過程が、エントロピー増大の過程となります。手に持っていたワイングラスが割れてガラスの破片になった過程は、エントロピー増大の過程です。砂で作られたお城が風で飛ばされた過程は、エントロピー増大の過程です。つまり、物事は無秩序であればあるほど、エントロピーが高くなることになります。

そして、この宇宙において、何事でも自然のまま放っておくと、そのエントロピーは必ず増大していきます。これは時間とどういう関係があるのかと言うと、私たち人間が感じている時間の流れる方向は、物事のエントロピーの増大していく方向と同じです。

少し理解しにくいと思いますので、次の二つ例を見てみましょう。

  • エントロピーの低いお湯は自然のまま放っておくと、必ずエントロピーの高い常温の水になっていきます。別の視点で、お湯は自然のまま放っておくと、時間が経つにつれ、必ず常温の水になっていきます。つまり、エントロピーの増大していく方向と、「時間」の流れていく方向が同じということになります。
  • また、人間の体は、必ずエントロピーの高い状態である老化した体になっていきます。別の視点で、人間の体は時間が経つにつれ、必ず老化していきます。つまり、繰り返しますがエントロピーの増大していく方向と、「時間」の流れていく方向が同じということになります。
エントロピーの増大=時間が未来という方向に流れる

これらの2つの例のように、エントロピー増大の視点から、時間は確かに未来という方向に流れていますし、過去と未来というものも確かに存在しています。しかしこれはあくまで、人間にとって時間の流れに方向性がある、としか言えません。この世界、この宇宙に関しては、人間がどう感じ取っていようが、時間は存在していないのです。

宇宙の始まりは最もエントロピーが低い状態である

この理屈に反対する意見の中でよく言われているのが次のような考え方です。宇宙を1つのトランプだと考えた時に、全てのカードが数字順とマーク順で並べられていた新品状態の時は、最も秩序のある状態であり、エントロピーが最も低い状態となります。つまりこの状態が宇宙の始まりになります。そして、宇宙というトランプは、その全てのカードが自然に数字順もマーク順もバラバラになっていきます。これは、宇宙のエントロピーが自然に増大していることを意味します。

先ほどもお話した通り、「エントロピーの増大イコール時間が未来という方向に流れる」ということから、エントロピーが増大し続けているこの宇宙には、時間は存在していますし、時間は未来という方向に流れている、という結論に至ります。

しかし果たして、事実は本当にそうなのか?

「1~10の数字順が秩序のある順番」ではないという結論もあり得る

ここで重要なのは、数字順とマーク順がバラバラになった時のトランプでも、別の視点から見れば、「秩序のある状態だ」という結論が得られます。なぜなら、1~10の数字順が秩序のある順番であるというのは、一般的な視点から得られる結論です。別の視点から見れば、数字順ではない順番のほうが「秩序のある状態だ」という結論もあり得るのです。ですのである種、どんな状態の宇宙でも、秩序のある状態だと言えます。

宇宙がどんな時でも「秩序のある状態」であるのなら、宇宙のエントロピーに変化がなくなります。従って、時間も流れていないということになります。少し分かりにくくなってきたかもしれませんが、ここまでの内容は全て次のことに繋がります。それは、「時間の本質は一体何なのか?」という疑問です。

時間の本質

先ほども触れましたが、私たちにとって時間は存在していますが、宇宙にとっては時間は存在していません。その理由は、

「時間」というものは、人間の意識が作り出した1つの幻影にすぎない

ということです。どういうことかと言うと、エントロピー増大の過程を感じることで、人間は時間の流れを感じ取っていますが、具体的にどう感じ取っているのかと言うと、エントロピー増大の過程においては、何らかの痕跡が残されます。人間の意識はその痕跡を感じ取ることで、時間が流れているという幻影を作っています。

例えば、ペンで紙に何かを書くと、その紙のエントロピーが増大すると同時に、書かれた文字という痕跡が紙に残されます。私たちはこのような“痕跡”を見て、過去なのか?未来なのか?を判断します。“痕跡”があるのは過去、“痕跡”がないのは未来、となります。私たちの脳は、エントロピーの増大による“痕跡”を集めることができます。

“痕跡”は、「記憶」という形で脳に残される

集められたこれらの“痕跡”は、「記憶」という形で脳に残されます。そして、脳はこれらの記憶を利用して、未来にどんな出来事が起きるのかを予測することができます。飛んでくるボールを手で受け取ることができた理由は、まさに脳が正しく未来を予測できたからです。

このように、脳が「痕跡の記録」と「未来の予測」を行うことで、“現在”という瞬間に生きている、という幻影を作り出しました。これを別の言い方にすると、「時間」という存在は、「意識」に依存している、ということです。「意識」がなければ、時間というものも存在しなくなります。今までの投稿で何度もお話したことがありますが、量子力学が研究している量子の世界では、1つの電子は同時にいくつかの異なる場所に存在していますし、同時にいくつかの異なる状態を持っています。このような状態は、「状態の重ね合わせ」と言います。この現象を私たちの常識から見れば不思議で仕方がありません。

受け入れられる電子の状態の重ね合わせ現象

しかし、“時間は存在していない”という仮説の上でもう一度電子の状態を見てみれば、その不思議な状態は受け入れることができます。時間が存在していないから、そもそも“同時”という概念が存在していません。“同時”という概念が存在しないのであれば、電子の状態の重ね合わせも何もおかしくなくなります。大切なことは、ここまでお話した「時間は存在しない」という見解は、現段階ではまだ仮説レベルの話だということです。今の時点でそれが100%正しいとはまだ言えません。

動画の最後に、もう一度アインシュタインのその言葉を味わってみましょう。

「物理学を信じる我々にとっては、過去・現在・未来という存在は幻影にすぎない」

いかがですか?冒頭で読んだ時より、今のほうがこの言葉、刺さりませんか?

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