【常温常圧超伝導】奇跡の技術か?ただの幻想か?

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韓国の研究チームによる発表

つい最近のこと、韓国の研究チームがLK-99という常温常圧超伝導材料の合成に成功したと宣言しました。

8月1日、アメリカのローレンス・バークレー国立研究所は、コンピュータシミュレーションによる検証を通じて、LK-99は超伝導特性を持つ可能性が高いと結論付けました。そして、中国の華中科技大は、部分的に磁気浮上が可能なLK-99の結晶の合成にも成功しました。

これらの発表は、常温常圧での超伝導性が現実のものとなる可能性を示し、科学界の盛り上がりだけではなく、超伝導関連の株が一斉に急騰するなど、世間に大きな驚きと興奮が広がりました。「超伝導」とは何か?「常温常圧超伝導」は何が凄いのか?これを世紀の大発見だとする意見、実証されれば即ノーベル物理学賞受賞だとする根拠は何なのか?そして最も重要なのは、今回のLK-99は一体本物なのか、それともただの幻想なのか?今回は、これらの疑問について深掘りしていきたいと思います。

ぜひ最後までお付き合いくださいね。

超伝導とは何か?

物質には電気を通す物と通さない物があり、電気をよく通すものを「導体」、通さないものを「絶縁体」と言います。例えば、金属のような導体は電気をよく通しますが、ゴムやプラスチックのような絶縁体は電気を通しません。それぞれの物質が電気をどれほど通すかは、その物質の「電気抵抗」によって決まります。

電気抵抗とは、電気が流れる際に遭遇する「抵抗」のことで、この抵抗が非常に大きいと、電気はなかなか流れにくくなり、そのような物質はゴムやプラスチックなどの絶縁体とされます。逆に、抵抗が小さいと電気はスムーズに流れ、それらは金属などの導体となります。

ただし、導体とは言え、電気抵抗が完全なゼロというわけではないので、私たちが日常で電気を使用しているあらゆる場面でも、電気を流すときには常に電気抵抗のせいで一部のエネルギーが失われ、熱となって周囲に散逸します。

では、ここで「超伝導」について考えてみましょう。超伝導は、電気抵抗がゼロである状態を指します。超伝導状態では、電気は何にも邪魔されることなく永遠に流れ続けることができ、エネルギーの損失もありません。ここから、もし私たちが使っている導体が全て超伝導体なら、世界はどのように変わるのかを見ていきましょう。

まず、電力伝送とエネルギー貯蔵の技術水準が別次元の世界に入ります。私たちが今使っている電気は送電線を通じて発電所から家や職場に送られていますが、このプロセスにおいて、電気抵抗のせいで一部の電力は熱として消失してしまいます。領土の広い国では、半分ほどの電力が無駄になっている場合もあります。もし全ての導体が超伝導の特性を持つのであれば、電力輸送に伴うエネルギーロスはゼロになり、大幅なエネルギー節約が可能になります。

また、エネルギー貯蔵についても、現在の多くのエネルギー貯蔵システムでは、蓄えられているエネルギーの一部が徐々に失われ、ある程度の時間が経つと、全てなくなってしまいます。しかし、超伝導体を用いたエネルギー貯蔵システム、もしくは電池ならば、そのような損失は発生しません。エネルギーは超伝導体電池の中で永遠に保存され、必要に応じて即時に使用することができます。これにより、電力の供給と需要の間に起こるギャップを埋め、電力の安定供給を実現することが可能となります。

そして、以上のお話は、実はまだまだ序の口です。既に魅力にあふれた技術だと感じますが、他の多くの分野も超伝導の恩恵を受けます。例えば、現在の電気自動車は、電気エネルギーの一部がモーターの熱として放出されてしまうという問題に直面しています。しかし、超伝導モーターは電気抵抗がないため、熱損失がなく、エネルギーを直接運動エネルギーに変換することができます。これにより、充電時間は大幅に短縮、運転可能距離も大幅に延びます。

次に、情報技術の分野でも超伝導は大きな役割を果たします。現段階のコンピュータチップは電気抵抗により熱が発生します。この熱はチップの性能を制限する1つの大きな壁です。しかし、超伝導チップは電気抵抗がゼロであるため、熱が発生しません。したがって、コンピュータのパフォーマンスを大幅に向上できます。さらに、超伝導材料は、一般のコンピュータより一段進化した量子コンピュータの実用化に貢献します。

これまでの動画でもお話したことがありますが、量子コンピュータが実用化すれば、人工知能技術も別次元の進化を遂げ、それによって科学技術の発展速度が大幅に加速します。

さらに、医療分野、交通分野においても超伝導は革新的な変化をもたらします。

そして、ここで特筆すべきことは、超伝導技術の核融合反応技術における応用です。核融合反応は、太陽のエネルギー源と同じ原理で働くものであり、これを地上で再現するには、高温プラズマを閉じ込める磁場を作らなければなりませんが、超伝導材料でできた磁石があれば、これを容易に再現でき、核融合反応技術の実現はもはや目前となります。以前の宇宙文明についての動画でも話したことがありますが、人類が核融合反応を駆使できるようになれば、無限に近いクリーンかつ安全な核エネルギーを手に入れることができます。したがって、その時の文明レベルは現在より大幅に向上します。

ご覧のように、超伝導はとても理想的なものに感じますが、なぜ私たちの日常生活では超伝導体の姿を見ないのでしょうか。その理由として、現段階では超電導を実現するには、非常に低い温度か、非常に高い圧力のどちらかが必要だという問題が無視できません。ここで言う非常に低い温度とは、材料の種類にもよりますが、通常は-200℃から-100℃ほどの超低温です。もし常温で超伝導を実現させたいのであれば、一般的には200ギガパスカル以上の高圧が必要です。これは地球の中心部の圧力と同レベルの超高圧です。

超伝導体の実験映像などを見てみると、白い煙が超伝導体を纏っている様子がよく見られますが、これは-196℃の液体窒素を用いて超低温の環境を作っているからです。ですので、超伝導体は実験室の環境に限れば作ることが可能ですが、現在の技術でこれを日常生活に応用するのはまだまだ非現実的です。

そして、このような背景の下で、韓国の研究チームは、常温常圧超伝導材料の合成に成功したと宣言しました。

常温常圧超伝導LK-99

7月22日、3名の韓国人著者による論文がarxivというサイトに掲載されました。論文のタイトルは「初の常温常圧下の超伝導体(The First Room-Temperature Ambient-Pressure Superconductor)」です。先ほどの内容からも分かる通り、もしタイトルの通りに、常温常圧下の超伝導体の合成に成功したのなら、この研究は人類の文明を次のレベルに導くものであり、即ノーベル物理学賞を受賞するに違いありません。

ただし、論文が発表されたarxivは、査読が行われていない論文を事前公開するためのサーバであることから、この研究が正確かつ再現可能であるかどうかはまだ確認されていません。

実際、学術界では新しい発見や理論が発表されると、他の研究者がその結果を検証するために同じ実験を行います。このプロセスを「再現性」の確認や評価と言い、科学的な結論が正しいかどうかを客観的に判断する重要なステップです。現時点で既に、他の研究機構がこの研究結果の再現に取り組んでいます。まだはっきりとした結論は出ていませんが、ここからは論文に記載されている超伝導体と現時点でのほかの研究機構の再現結果を分析していきたいと思います。

この研究で合成された超伝導体はLK-99と名付けられています。この名前は、論文の第一著者であるLeeと第二著者であるKimの名前と、彼らが初めてこの物質を発見した年である1999年を表しています。2008年、二人は自分たちの研究所を立ち上げ、LK-99に関する研究を続け、それからさらに12年を経た2020年、1000回以上の実験でやっと常温常圧下で超伝導性を持つサンプルの合成に成功したと言います。同年、二人は学術誌Natureに研究成果を投稿しましたが、様々な理由で却下されました。

その後、二人はアメリカのウィリアム・アンド・メアリー大学にLK-99の超伝導性を確認してもらった結果、常温常圧下の超伝導性が確認されたと言います。その後、二人はLK-99に関する特許を申請しました。一部の報道によると、その時点でウィリアム・アンド・メアリー大学は正式に論文を発表しようとしましたが、研究に関与した高麗大学校のKwon教授が、ノーベル物理学賞を受賞する可能性を予見し、LeeとKimの了承なく、勝手にarxivで論文を発表し、第三著者に自分の名前を入れました。

ノーベル物理学賞は3人までしか受賞者を認めないため、Kwon教授は、LK-99でノーベル物理学賞を受賞した際に、その栄誉を一部自身にも帰属させようとしたと指摘されています。

この論文では、LK-99は温度127℃、常圧の環境において超伝導性を示すと報告しています。しかし、論文には肝心なLK-99の電気抵抗率に関するデータが記載されておらず、常温での導電率に関するグラフしかありません。

さらに妙なことに、この論文が掲載された2時間後、LK-99に関するもう1つの論文がarxivに掲載されました。こちらの論文では、第一著者のLeeと第二著者のKimに、他にも4名の著者が追加されたと同時に、Kwonの名前は著者リストからなくなりました。データに関しても、こちらの論文には常温での電気抵抗率に関するデータも記載されています。

この研究結果の真偽は?

ノーベル物理学賞の受賞にまつわる闘争が既に始まっているようにも感じられるこれまでの一連の出来事ですが、最も気になるのはやはり、LK-99が本当に常温常圧超伝導体なのかという点です。それを探るための現時点での限られた手段として、まずはより詳細なデータが記載されている2本目の論文を詳しく分析していきましょう。

こちらの論文には肝心な常温における電気抵抗率の測定値が記載されていますが、グラフを見てみると、抵抗率は臨界温度でゼロになったのではなく、臨界温度からゆっくり減少し、徐々にゼロまで減っていることが分かります。このような現象はほかではあまり観測されませんが、結果的に電気抵抗率はゼロになっているので、データだけを見れば、この結果は超伝導性を示しているように見えます。

しかし、このグラフに対するある指摘によれば、グラフの縦軸の単位が非常に大きいため、一般的な金属でも、その電気抵抗率の値をこのグラフに入れたら、それはゼロに見えてしまいます。また、論文を発表した研究チームは、LK-99が磁石の上に浮いている様子の映像を2本公開しています。

彼らがこれらの映像で何を言いたいのかというと、超伝導体は電気抵抗がゼロになるだけでなく、磁場を内部から排除する性質を持っているのだということを示そうとしているのです。その理由として、超伝導体は磁気を遮蔽するシールドを形成するため、磁場は超伝導体の内部に侵入することができません。したがって、超伝導体が磁石の上で浮く現象が起こります。これを根拠に、研究チームは映像を通して、LK-99は常温常圧において超伝導体の特性を持っていると主張しています。

映像にあるサンプルは確かに一部が磁石の上に浮いていますが、問題は、それはサンプルが超伝導体であることの証明にはならないということです。なぜなら、超伝導体は必ず磁石の上に浮きますが、磁石の上に浮くことができるのは超伝導体だけではありません。他の材料、例えば強磁性体も同様の現象を示すことがあります。ですので、今回公開された論文と映像だけを以て、常温常圧超伝導体が発見されたと確定的には言いがたいです。では、今回の発表はただ注目を集めるためのでたらめだったのかと言われたら、そうでもありません。

実は、今回のような「常温常圧超伝導体を発見した!」と自称する研究は、これまでも繰り返し公開されてきています。直近の物では、2023年3月、アメリカのランガ・ディアスという研究者が、常温常圧超伝導体の発見を公表し、論文の投稿や学会での発表などで一時的にニュースにもなっていました。

ただし、ディアスが論文で報告した超伝導体の合成方法は非常に複雑であり、それを再現し検証しようと思っても、かなりの時間や労力、設備と技術が必要でした。そしてしばらく経ってからやっと判明した事実ですが、ディアスの論文には偽装されたデータが含まれており、彼が主張するような超伝導体は存在しなかったのです。合成方法を非常に難しくしたのも、ほかの研究者による検証のハードルを上げるためだったと考えられています。

ただし、今回のLK-99はそれとはまったく異なります。論文が報告しているLK-99の合成方法と必要な材料はそこまで複雑なものではなく、高校の化学実験室でも用意可能な程度のものです。もし最初から偽の研究成果を騙るつもりだったのなら、すぐに嘘がばれるような合成方法にはしないはずです。そして、ほかの研究者による検証でもある程度LK-99が現実的に存在しうることが示されました。

冒頭でもお話したように、アメリカのローレンス・バークレー国立研究所は、コンピュータシミュレーションによる検証ではありますが、LK-99は構造的には超伝導特性を持つ蓋然性が高いと結論付けました。そして、中国の華中科技大学は、部分的に磁気浮上が可能なLK-99の結晶の合成に成功し、さらに、-163℃という低温状態ではありますが、その温度であればLK-99の電気抵抗が0になったことも確認できました。これは今まで様々な実験が行われてきた中でも、超伝導体が動作可能な温度としては比較的常温に近づいたものであるため、今回のLK-99は当初謳っていたほどの凄さとは言えないものの、少なくともその方向性は確実な進歩です。

超伝導関連の株が一時的に急騰したのも、投資家たちがLK-99のポテンシャルにピンと来たからでしょう。以前までは、常温常圧超伝導体の発見を自称する者が現れても、どれもこれほどの影響力はありませんでした。

ある意見によれば、発表された論文に記載されている合成方法は、LeeとKimが発見した本来の完全版ではないとのことです。これもほかの研究チームが論文通りの結果を再現できない理由だと考えられています。完全版の合成方法が公開されていないのは利権の問題が大いに絡んでいるからだろうと予想できますが、僕が唯一望むのは、もしLK-99が本物なら、それが決して闇に葬られることがないようにということです。本件については今後も追っていくつもりなので、何か進展があればまた動画にします。

それでは、今日もありがとうございました。

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